お勧め度:⭐️⭐️⭐️⭐️
「えぇぇ、、、むちゃくちゃきついじゃないか。」物語の最終局面、P247のやり取りの中盤から話がガラッと変わってしまった。
「人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな」引きの強すぎる帯にやられて手に取ってしまった本作。
正直、序盤はあんまり好みではなくて。
本の初めについている口絵にもかなり偏ったものを感じてしまって、、、「うーん、、」となった。
最初の30分くらいの感想はハズレ?でした。
「人間標本」という犯人の手記という形で物語が始まるんですがイ◯れてるなぁ、めちゃくちゃ気持ち悪いこと書いてるなぁ。と思いつつ
狂った父親が子供を手にかけてという話をどうまとめるのかと不安になりました。
しかし、、、、夏休み自由研究「人間標本」という手記が出てきてから急展開「え、え。なぜ?」となりながら、一気にイヤ〜〜な空気が濃くなります。
おーい、そうくるか。と。次口に明かされる手記に隠された秘密。重たいテーマを軸に据えながら、エンタメに仕上げてるところが流石。
そうか、なんて救いようがないんだ。悲しすぎる。これぞ、イヤミス。なんて1人で納得しながら終盤へ。
物語の95%が終わった最後にもう一段、そして99%終わりのところでさらに一段絶望に落としてきます。
誰も救われない、妥協のないバッドエンド。これぞ、イヤミス。
イヤミスが苦手な方はやめておきましょうね。
ハッピーな気持ちになる要素は皆無ですから。
簡単なあらすじ
物語は「人間評本 榊史郎」という手記から始まります。蝶に魅せられ蝶の第一人者として生きていた筆者がどのようにして「美しい少年」を「蝶に見立てて標本」として仕上げていったのかが詳しく語られます。世間を震撼させたこの事件の犯行手記はフリーの小説サイトにアップされ、世間に拡散されていきます。
しかし、物語にもう一つの手記が登場します。そのタイトルは「夏休み自由研究 人間標本 2年B組13番 榊至」。この手記によって全てがひっくり返ります。
この本で好きだった表現
風紀委員長が道端のゴミを拾って処分したかのような、清々しい足取りで。その背中に、ぎょろりとした悪魔の目が見えたのは、私がモルフォの裏面を知っていたからに違いない。蛾と見紛うばかりの醜い姿。(P75)
だが表と裏とは何だろう。例えば、表の顔、裏の顔と言うと他者を意識した姿と、他者に隠している姿という、目に見えるものと見えないものを表裏で表しているが、背面は見えないわけではない。むしろ直接見ることができないのは自分の目からのみで、他者からは丸見えである。それなのに、多くの人間が表に気を配るのは、単に、鏡に向かった際、そちらがよく見えるからではないだろうか。自分の目に映る姿を、他者の目を通して想像し、こう映りたいと思う姿に整える。もしも、後頭部にも目があれば、背面を裏とは認識しないかもしれない。自分の目に見えるものが表、見えないものが裏。(P161)
引用元:「人間標本」筆者 湊かなえ
筆者プロフィール
1973(昭和48)年、広島県生まれ。2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞候補となる。他の著書に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などがある。
引用元:https://www.shinchosha.co.jp/writer/4518
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